樹木医の手記

北の木もれ日「サルノコシカケ」

2016.11.28

<北の木もれ日「サルノコシカケ」 平成18年10月15日北海道新聞日曜版掲載>

 キノコをよく目にする季節になりました。キノコの仲間は生物学的に言うと菌類(主にカビ)に属し、光合成ができません。主に落ち葉や枯れ落ちた枝などを分解して栄養を得ています。

 サルノコシカケは、死んだ樹木を栄養分として生活していますが、中には胞子のときに生きている樹木の傷口などから侵入し、内部から腐らせて栄養を取るものがあります。「材部腐朽菌」と称し、カバノアナタケなどもこの一種です。

 キノコが生きた樹木の内部を腐らせて栄養をとっている間、外部からは異変は分かりません。内部を食べ尽くしてきたころ、次世代を残すために私たちが目にするキノコ(胞子形成器官)を作ります。このとき、樹木はすでに腐朽が進み、末期の状態にあります。

森林の生態系を守るサルノコシカケ

森林の生態系を守るサルノコシカケ

 サルノコシカケは普通のキノコと違って、一度できたキノコの下表面に新たに胞子を作る層を形成し、成長していきます。年輪のようにいくつも層を作って、やがて「猿も腰掛ける」大きな形に変化していきます。

 樹齢が高い森林でよくサルノコシカケを見かけますが、老齢木になると腐朽が進行し、倒れやすくなっています。老木が倒れると、その下の稚樹に光が差し込み、世代交代が進みます。サルノコシカケは、樹木から見ると怖くもありますが、森林の中では、他の菌類とともに生態系を維持するために重要な役割を担っているのです。

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